養育費をとぼける相手にちゃんと約束を守ってもらうあの手この手

離婚のときに慰謝料と養育費をセットで考えている人は多いと思います。貰う側としては、いくら貰っても足りないと思うものですが、当然ながら相手に財産があるならともかく、支払える限界は一般的には低いものです。

相手の生活を破壊させるような慰謝料や養育費の請求は不可能と考えていいでしょう。懲らしめたい気持ちがある人も、やり過ぎると今度は加害者になりかねません。

こうして、協議離婚をする場合でも、調停でも、和解でも、払える範囲の金額で慰謝料や養育費が決まっていくことになります。払えるはずの範囲なのに、それが払われない、といった事態もあり得ます。そうなると、「こっちは妥協した上に、払ってもくれないのはどういうことか」とさらに怒り心頭。殴り込みたくなるかもしれません。

協議離婚のときに、ただお互いに納得して離婚届を出してしまうと、「言った、言わない」という話になりがち。そこで、協議離婚でも、決めたことは書面にして、離婚協議書として残すこと。さらにそれを公正証書にすることをお勧めします。

ここまでしても、払わない場合もあり得ます。そのときに問題になるのは、「払わない」のか、「払えない」のか、です。離婚時にはあったはずの仕事が、その後なくなってしまい、収入そのものが失われたりすれば、支払いが滞ることもあり得ます。

そういう場合に、取りっぱぐれないようにするには、離婚時に一括で払ってもらう方法もあります。これは確実性が高くなります。1人のお子さんについて月額2万から4万円ぐらいの間が多いのではないかと思いますが、3人子どもがいるからといって単純に3倍にはなりません。10万円を超える養育費が得られるケースは少ないでしょう。相手の年収が700万円以上あるなら10万円以上になる可能性はありますが……。

3万円として年額36万円。それが子どもが18歳になるまでで考えるのが一般的です。5歳の子だったら、あと13年。15歳からは教育費が高くなるので養育費も高くなります。5万から6万は欲しいところ。最初10年間は360万円。その後の3年間は216万円。合計576万円。これに慰謝料をプラスして、一括で払ってもらうわけです。

「払ってもらえるか不安だから保証人をつけてほしい」と考える人もいます。たとえば相手の親に連帯保証人になってもらうという方法です。実は、これはあまりうまくいきません。夫婦間の問題ですので、相手の親はなんの義務もなく、どれだけ親が大金持ちだろうと拒絶しても法的には問題がありません。

夫婦で子どもを育てるのが日本のルールです。その夫婦が離婚することによって子どもを育てる費用をお互いに負担し続けることが養育費の意味なので、それを夫婦の親(祖父母)が保証する理屈はまったくないのです。厳しいようですが、一方が養育費を払えない場合でも、どちらかが子どもを育てる義務が親としてはあるので、それを祖父母に負わせる理屈は通らないのです。

一括ではムリな場合、毎月になると思います。離婚協議書を強制執行が可能なようにつくって公正証書にする、調停を受けて離婚するといった方法で、強制執行ができるようになります。ただし、相手が転職した、転居したといった場合には、その先を見つけなければなりません。

このように、あの手この手を考えても、「払えるお金も財産もない」と言われると、強制執行にも限界があることは、あらかじめ理解しておいてください。

調停になってしまったときにどうやればしっかり主張を通せるか?

離婚届までたどり着けず、あなたが、または相手が調停に持ち込むことは十分にあり得ることです。とくに親権が絡むとき、多額の慰謝料がからむときに調停に進むことが多くなります。

どちらの主張にも一理あるはずなので(なにしろ、そもそも夫婦だったのです)、調停になったからといってすぐ解決するわけではありません。

裁判と違い、家裁の調停は家事審判官、調停委員が双方の意見を聞いて、問題点を明確にし、納得できる部分を見つけていくことになります。

忘れてはいけないことは、家事審判官、調停委員も人であるという点。調停は法律に則って進みますが、そもそも審理をする以前に、当事者同士が納得すれば解決するだろう、という期待から生まれた方法です。調停には人間的な側面が多く、調停する側も同情したり憤慨することはあり得ると考えておいてください。

なお離婚については、いきなり訴訟することはできません。必ず調停を受けてから、それで解決しないときだけ離婚訴訟ができます。離婚で10%近くが調停に進みますが、そこから訴訟へ進むのが1%程度というのは、前にお話したように時間と費用がかかりすぎる点もあると思いますが、この仕組みが有効な証拠とも言えます。

家事審判官、調停委員が調停に対応します。当事者は双方が顔を合わせることなく、個別に調停を受けます。プライバシーは守られるので、言いたいことはなんでも言えます。もちろん、相手に現在の住所を知られたくない場合も、そのように対応してくれます。

調停は月に1回程度で、8割ぐらいは半年以内に解決しています。その間の生活費を相手に請求することもできますし、財産を勝手に処分されないようにすることもできます。

さきほど、調停も人のやることだからとお話しましたが、相手の悪口をいくら言っても解決はしません。事実をしっかり伝えること、どうしたいかという希望もはっきりさせることが第一です。それがあやふやでは、いい結論は得られません。

そして妥協できる点についてもよく考えてみてください。男と女ではこだわる部分がかなり違うということも往々にしてあります。どうでもいいことは相手の意見を通してあげるぐらいの気持ちになってくると、調停もスムーズに進むでしょう。

もっとも、相手が調停に出て来ない、調停をしても離婚に合意できない、という場合もあります。このときは訴訟まで進むか、もう一度、話し合うのか、専門家とよく相談して決めてください。

調停をなめている人も、裁判になれば急変することもあります。慌てて妥協してくることもあり得ます。

この点で、調停に相手が出てこない、不成立で終わるといった場合でも、めげないことです。

交渉が揉めてなかなか離婚ができないときに焦らずに対応する方法

離婚届を出せば離婚は成立。きわめてシンプルな話ですが、実はその離婚届が作れない、提出できない、というケースもよくあります。

離婚の条件の話し合いどころか、離婚を認めないと主張し続ける相手もいるでしょう。「なんで離婚しなければならないのか」と言うわけです。

世間体を気にする人もいます。職場でのメンツを気にして離婚したくない、仮面夫婦でもいいから退職するまで離婚はないと言い張る。親の介護もあるので、なんとしてでも離婚だけはしたくないと考える人もいます。そのほか、離婚する理由と同じぐらい、離婚しない理由もいっぱいあります。

とくに、突然の離婚話に動揺している間は、冷静に考えることができません。この時に、急いでしまうと相手はまったくついて来られないので、「絶対に判は押さないから」と最後の抵抗をします。

この場合、大切なことは、時間と事実です。とくに時間については相手のこともあるので、自分勝手なスケジュールを組まないこと。もっとも性格の不一致が原因とすれば、時間についての考え方も正反対かもしれませんが、そこは、一度は結婚した相手なのですから譲れるところは譲って、話し合いをしっかりやってください。

自分が時間が取れない場合は、弁護士などの専門家を頼む必要もあるでしょう。ただ、いきなり弁護士がやってきた、というだけでさらに意固地になる人もいますので、専門家を利用するときは、専門家とよく打ち合わせをして対処することをお勧めします。

専門家にお聞きすると、わがままというか、自分勝手な依頼人のために、かえって手続きがうまく行かず「相手に同情しそうになった」なんてケースもあるそうです。また「専門家を雇ったのに、専門家の言うことをきかない」という人もいるそうです。最初は気が動転しているのかと思ったのが、いつまでたってもその調子。「コミュニケーションができないタイプなので困りました」といった声も。

こうした場合、専門家が注目するのは「事実」です。気持ちや感情はとりあえず置いておき、なにがあったのか。どうしてそうなったのか。事実だけを確認し、書面にしていく。困った依頼者、逃げ回る相手ともに、書面でのやり取りをし、それを積み上げていくこともあるのです。

これは事実になんとか向き合ってもらうためでもあり、話下手な人、感情的な人でも話を進めるための方法でもあり、同時に「時間稼ぎ」なのです。

面倒なようですが「急がば回れ」。かたくなな相手と交渉のテーブルにつくためにも、一定の時間が必要です。人間は、時間の経過とともに気持ちも考え方も少し変化します。その間に離婚について調べたり、誰かに聞いたり、相談したりもするでしょう。そのような時間は双方に必要なのです。

くれぐれも、こちらの都合で急ぎすぎないことです。どんな交渉も、急いだ側が負けます。いわゆる「足元を見られる」からです。専門家とよく話し合って、時間軸を含めたスケジュールをつくることをお勧めします。

ポジティブすぎて離婚後の生活ばかり夢見てる人が陥りがちな失敗

離婚が成立すればそのあとは、完全なフリー。独身時代に戻れるから、なんでも好きなことができる……。

離婚は人生の大きな節目となります。できれば、よりよい人生のための再スタートにしてほしいと思います。ですから、離婚後の生活にポジティブな気持ちを強く持つことはとてもいいことです。それが、少し面倒で、エネルギーを消耗する離婚手続きを前に進めるためのパワーになるからです。

ただし、このときに1つだけ考えてほしいことがあります。それは独身にはなりますが、結婚前の自分に戻れるわけではない、ということ。結婚から離婚までの間に、確実に月日が流れています。タイムマシーンで結婚前の自分に戻ることができるわけではないのです。

たしかに独身になります。でも結婚、離婚を経ての独身。年齢も見た目も考え方も、かつての自分とは違います。いまできること、やっていいことも違います。この点に無自覚な人は、「離婚さえすればその先はバラ色」と夢見る夢子ちゃん(または夢夫くん)になっちゃいます。

慰謝料をパーッと使ってしまい、養育費が来るから大丈夫とばかりに、職を変えて、突然、自分の夢に向かって動き出してしまうといった行動。気持ちはわかりますが、それはまるで、柵が壊れて野原に走り出した羊のようなもの。一時的な解放感はたまらなく楽しいでしょうが、その向こうには自分たちを狙うオオカミもいれば、厳しい風雨も待ち受けています。崖もあるでしょう。

気づかぬうちに、自分の能力の限界を超えてしまっている人を見受けます。幸せな離婚どころか、いままで以上にただハードな日々になってしまっている人もいます。心の隙間を埋めるために必死になってしまう人もいます。そして、経済的にも精神的にも自分を追い込んでしまう人もいます。

オオカミに追いかけられて崖に落ちてからはじめて「誰か助けて」と叫んでも、ちょっと遅い。だったら、わけもわからず、パーッと駆け出すのはやめておくことです。

考えてみてください。離婚によって解決できる部分は多いかもしれませんが、解決しない部分もあるのです。たとえば経済的な自立。いまの仕事の収入で自活できるのか。できないのなら、身を寄せる場所はあるのか。実家に戻ったとき、そこでどんな仕事ができるのか。どんな人たちとお付き合いができるのか。

個人としての人間力が試されることになります。現在、離婚そのものはそれほど珍しいことでもないですし、バツイチだからと偏見を持たれることも少ないはずです。堂々としていいのです。自分の持っている力を地道に発揮していくこと。そして自分の人生を歩むこと。そんな姿に、周囲は安心し、信頼を寄せるでしょう。

新たな人間関係づくりを模索しながら、離婚で学んだ経験をプラス方向に生かしていくこと。それを着々と、確実にやっていくことが幸せな離婚につながるのです。

後悔しないために面倒だけど慰謝料や財産分与について考えよう

離婚といえば誰しも思い浮かぶのは慰謝料です。自分の心の傷や悲しい気持ちは、お金に換算できるものではないでしょう。ですが、とくにどちらかが一方的に離婚原因をつくった場合、まったく悪いことをしていない側に対して賠償をする必要があります。精神的苦痛を慰謝(なぐさめる)する目的で、損害賠償の一種と考えていいでしょう。

慰謝料が貰えるか貰えないか、貰えるとしたらいくらか、という点も気になるところですね。慰謝料を払う原因として、裁判など実際に多い例から一般的に言われているのは、浮気、暴力、家庭を顧みない(遺棄)、婚姻生活に対する協力がない、性交渉がないことなどがあります。

実際にはこうした要素が重なりあっていることも多いでしょう。たとえばなにかが原因で性交渉がなくなり、そこから相手は浮気をするようになり、家に帰らない、生活費を入れないといった状態に発展し、たまに会えばケンカになって暴力をふるう、といったように。

こうしたことが重なれば重なるほど離婚がどちらに原因があるのかは明確になります。ですが、それによって慰謝料がどんどん大きくなる、と思うのは間違いです。

裁判などで最終的に落ち着く離婚の慰謝料は、実はそれほど多くありません。100万円ぐらいから多くて300万円程度が相場と言われており、訴訟になったときに弁護士さんに相談しても、この範囲の話に終始すると思います。

「えー、なんで! 私の心の傷は1億円だよ!」と思うかもしれませんが、支払える限度から現実的な金額に落ち着くのです。また離婚原因がなんであれ、離婚によって解決してしまうと考えることもできますから、相手の生活を破壊するような慰謝料の請求はできないと思っていいでしょう。

日本は法治国家であって、復讐は認められていません。報復的に「懲らしめたい」と思う気持ちはわかりますが、極端なことはできないし、やろうとすれば逆に訴えられる可能性もあります。やり過ぎは危険です。被害者が加害者になってはいけません。

財産分与についても冷静に考えてください。婚姻によって共同の生活がスタートします。それ以前からあった財産はそれぞれのものです。婚姻後に生じた財産について2人で分けていくことになります。

このときも、考え方はさまざま。婚姻生活を清算する意味で財産を分けるという考えもあれば、そこに慰謝料としての意味を加える場合もあります。収入に大きな差がある場合、相手が困窮しないようにするという意味もあります。

たとえば、夫の名義の住宅でも、夫だけの財産とはみなされません。婚姻期間にローンを返済していたら、それは夫婦で共同で返済していると考えられます。その分だけ妻にも分けてもらえるというわけです。

ただし別居期間が長い場合は注意が必要です。相手が一方的に家出をしている場合でも、事実上、夫婦の共同生活は破綻しているといえますから、その間に取得したものは共同の財産ではないのです。

パートナーだった人がギャンブル中毒になって多額の借金をつくり、それが原因で離婚となったような場合、その借金まで夫婦で分与するのか。また、借金をこのように個人的に作った側が、どれだけ借金に苦しんでいるとしても、財産の分与はそれとは関係なく分けることができます。一方、住宅ローンのように夫婦で共同生活をするために生じた借金については等分されます。

財産分与のトラブルで多いのは「これは私のだ」「いえ、共同のものだ」といった線引きです。一方的に「財産分与の対象だ」と決めつけていても反論される可能性がありますから事前の準備が必要なのです。

協議離婚をするときに忘れてはいけない重要なポイントはこれ!

協議離婚はきわめてシンプル。お互いに離婚で合意して離婚届を出す。受理されれば完了です。

ですが、このシンプルさのために、離婚後のトラブルが多いのも事実です。離婚してしまえば、相手と会ったり話し合いの席に来てもらうことさえも、なかなか難しくなります。距離的にも遠く離れてしまうと、コミュニケーションも取りにくくなり、まして双方が再婚に向かうなど新しい生活をはじめていく状況となったら、ますます解決は難しくなります。

協議離婚は離婚届を出す前に、なにをしておくかで、その後の幸せ度が変わるといってもいいでしょう。では、なにをしなければならないのか?

離婚でどちらか一方が離婚の原因をつくったとき(不誠実、浮気、借金など)は、原因の所在を明確にしておく必要があります。というのも、離婚が成立してしまえば双方合意したことしか残らず、離婚そのものとは直接関係のない、慰謝料、養育費、親権、財産分与などの割合などまで平等になりかねません。

このため、お互いに協議した内容を書面で残すことが必要です。そこには、どちらがいつまでに、どのような費用を相手に支払うか、財産を分ける比率などを明示しておくのです。たとえば慰謝料が発生しているとしたら、慰謝料を払う側に離婚原因があったことが誰の目にも明らかになります。感情的な文章は残す必要はありません。事実を明確に示せればそれで十分です。

ただし、この書面も2人の間だけで取り交わしただけでは十分なパワーがありません。ドラマじゃないですが、ビリビリと相手がそれを破いて「こんなもの知らない」とうそぶかれたら困りますよね。

そこで、次に、この書面、いわゆる「離婚協議書」に仕立てて、公正証書にします。公正証書とは、大きな町にある公証役場に書類を持っていき、公証人によって公的な文書にしてもらいます。

公証人は元裁判官など法律の専門家です。公証人はみなさんの必要な文書が、法律に則った正式なものになるように手伝ってくれます。費用はこの離婚協議書で支払うことがはっきりする金額に応じて決まります。なお公証役場には双方で直接行くか、代理人が行くことになります。代理人は誰でもなれますので、親兄弟でも知人でも委任状をつくって任せることができます。また、全国どの公証役場に行ってもかまいません。双方の都合のいいところを探して利用するといいでしょう。

離婚協議書をつくり公正証書にすると、強制執行が可能になります。離婚協議書にも、約束が守られないときは強制執行するという文書を入れておくことをお勧めします。これでどちらも合意の上で、離婚手続きを進めていくことができますし、離婚後も誠実に対応しなければならないことが公的にはっきりするのです。

すぐに弁護士に相談すべきか?自分にとって役立つ専門家を探そう

最初から「弁護士を見つけよう」という前に、自分がどうしたいか、一度は考えてからでも遅くはありません。結論が出なくてもいいのです。それはこれからのことだから。ただ、なにを考えるべきなのか、なにを相手と交渉すべきなのかは、明確にしておくことです。

離婚のもっとも難しい点は、結婚した相手との齟齬。そういう部分があるから離婚するわけですが、そのためにおそらく最後まで話がズレてしまう可能性があります。それだけに相手の反応ばかり考えていたら、かえって前に進めません。「あれはこうしたい」「これは、こうする」と意見をまとめておくことです。

離婚を決意して、自分なりに「こうなることが理想だ」と思えるビジョンを描いたあと、それを実現するために足りないものを補う必要があります。

離婚については弁護士をまず思い浮かべると思います。ですが離婚に関わる専門家の中でもっともコストのかかるのも弁護士です。弁護士の中にも離婚を主に扱っていて、カウンセリング的な対応もしてくれる人がいます。

弁護士の魅力は、代理人として対応してくれる点です。こちらが忙しいときは自分の分身として話を進めることができます。交渉の必要なときに、相手側の都合に合わせて出向くのはかなりの負担になりますので、代理で相手と会える弁護士は役に立ちます。ただし、それだけお高い。ただし、相談だけなら5000円ぐらいから対応してくれる弁護士も多いので、試してみる価値はあります。

離婚カウンセラーという人たちもいます。民間資格などを持ち、相談相手になるだけではなく、専門性のある知識で、こちらの目指す離婚についてアドバイスをしてくれます。費用としては弁護士ほどではないとはいえ、よく知られたカウンセラーにアドバイスを求めるときは、相応の費用もかかる場合があります。

参謀として役立つでしょうし、こちらの心の傷についてもアドバイスをしてくれる点が魅力でしょう。とはいえ、人数が少ないこともありますし、どこまでやってくれるのかよくわからない点もあります。中には探偵業の兼業という場合もあり、浮気調査から離婚カウンセリングへとつなげて、多額の報酬を求める例もあるようですから、注意したいところです。

司法書士、行政書士も離婚について一定の範囲で業務を担当しています。財産分与の名義の書き換えなどは司法書士に頼むことで解決できる場合もあります。また行政書士は離婚にあたっての協議書の作成など、必要書類作成を手軽な金額でやってくれる便利さがあります。

ただし、司法書士、行政書士はこちらに代わって相手と交渉することはできませんし、当事者を引き合わせて折衝したり、交渉に口を挟むことも資格としてはできないとされていますので、なんでもかんでもお任せすることはできません。しかし、書類上のことだけなら、安い費用で対応してくれるでしょう。

このように、専門家はいろいろいますが、自分のやりたい離婚に必要な人材をうまく活用することです。お互いに合意があり、公正証書などに残しておこうという場合などに司法書士や行政書士に頼む。心のケアを含めた相談窓口としてカウンセラーに頼む。相手との交渉や訴訟になることを含めて弁護士に頼む、といったように考えていくわけです。

離婚は人生にとって大きな事件ですが、現実としてはそれだけに専念できる人は少ないと思います。専門家との二人三脚によって、時間を倍に使えて、知識は何倍にも拡大できるのですから、上手に活用したほうが幸せな離婚を現実のものにできるはずです。

相談する前に理解しておきたい離婚の手続きと決めておくべきこと

協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚、和解離婚、認諾離婚……。離婚にも6種類もあるのか、と驚かれたかもしれませんが、こうした法律や手続きの知識は一般的な部分だけでも知っておくと、あとあとの選択肢が広がりますので、ちょっとだけ「6種類ぐらいあったなあ」と思っておいてください。

和解離婚、認諾離婚は比較的耳馴染みながない言葉でしょうから、少し補足します。

和解離婚は離婚訴訟後に、当事者がお互いの言い分を理解し歩み寄ることができる場合、また裁判所から「そろそろ和解してはどうか」と勧められた場合に、両者の同意の上で離婚する方法です。調停時には意地を張っていた両者が、裁判になってから考え方が変わることもゼロではないので、その場合は裁判を継続して時間を費やすより和解で決定しようということです。この場合も、判決と同じ効力があります。つまりお互いに慰謝料や養育費で納得して離婚となりますので、支払いが滞った場合は強制執行もできます。

全体の離婚の流れを理解しておいてください。「まずこれをやって、これがダメならこっちへ行く」というイメージをつかんでおけば、専門家の活用のときにも役立つはずです。

また、近年、国際離婚も増えています。その多くは協議離婚です。ただ、子どもの親権、どちらの国で養育するかという点では争いが多く、2014年4月から日本もハーグ条約に加盟しましたので、それ以降の争いはハーグ条約に基づくことになります。

それぞれの方法に詳しく入ってしまう前に、もっと大事なことがあります。よく「じゃあ、弁護士に頼もう」とすぐ知人などを通して弁護士探しをはじめる人もいます。ですが、その前に、ご自身でちゃんと考えておくべきことあるのです。

なにしろ、離婚するのは自分なのです。当事者なのです。自動車を買いたからと、メーカーも車種も決めず、セールスマンを呼ぶ人は少ないはずです。「なにがいいかな」と考えるとき、「自分が運転するのなら」という条件がついているでしょう? 離婚も同じ。自分で決めて自分で進めていくのです。そこを間違えてはいけません。

いきなり専門家が来れば安心ですが、「それならこれ」みたいに、よくある事例、専門家の豊富な経験による選択で、あれよあれよという間に手続きが進んでいくこともあるでしょう。確かにスムーズかもしれませんが、それはあなた自身の幸せとは必ずしも一致していないはずです。

離婚さえすればなんでもいい、という場合も皆無ではないでしょうから、その時はいきなり専門家に任せることも選択肢としてはあり得ます。

結婚のときに、結婚届を書いて役所に出したと思うのですが、それと同じように離婚届を出せば終わり、といきたいと思ってもそうはいかないことが多いと思います。

生活を中心に考えても、いま住んでいる家はどうするか。ローンは? 名義は? このほか結婚後に築いた財産をどう分けるか。または、築いた負債をどう処理するか。

個人のことでは、氏をどうするか。誰に離婚の報告をするのか。表向きはどういう理由か言えること、言えないことの整理も必要ですね。

子どもがいる場合はその親権、養育をどうしていくのか。ペットがいる場合はどうするか。

次の生活の拠点をどこに置き、そのような収入でやっていくのか。

こうした気になることを思いつくままに書き出しながら、どうなるのが理想かを考えてみてください。そして、離婚には相手があることですから、相手にどう納得してもらうかも考えてみてください。

幸せな離婚を進めるために覚えておきたいいくつかの重要なこと

離婚は6種類あることを御存じですか? 離婚はその手続きの方法から6つに分けて考えることができます。協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚、和解離婚、認諾離婚です。これは、基礎の基礎なので、念のために説明をしておきます。

協議離婚は、離婚の9割近くを占めるとても一般的なやり方です。ステップはとても簡単です。夫婦双方で離婚に合意して、離婚届を作り、役所に届けます。郵送もできます。

協議離婚のメリットは合意さえできていればいつでもすぐに離婚できること。デメリットとしては合意できない限り離婚はできないこと。また不満を持って離婚した場合にのちのち相手に交渉の場につかせることが難しいこと。離婚時に慰謝料などを決めたとしても守られるかどうかわからないことなどでしょう。

調停離婚は、家庭裁判所に間に入ってもらって調停をしてもらうものです。合意がなかなかできないときに調停してもらう、というのは一般的なステップです。離婚の10%ぐらいがこの調停離婚と言われています。

調停離婚のメリットとしては家裁による双方への働きかけが期待できる点です。法律や離婚に詳しい第三者によって話し合いがスムーズに進む場合があります。デメリットはあくまでも調停なので、裁判所として判決を出すほどの強制力はありません。お互いが納得できる線で合意することになります。

審判離婚は極めて事例が少ない方法です。調停がうまくいかないときに、家裁が事情などから離婚をするべきと判断して審判によって離婚を決定します。ただし審判に不服があれば2週間以内に異議を申し立てるだけで審判は無効になってしまいます。異議申し立てがなければそのまま離婚が成立します。この方法を採るぐらいなら、次の裁判離婚へとなることが多いはずです。

裁判離婚は、全体のわずか1%程度とこれもレアケースなものです。調停による離婚ができない場合、どちらかが家裁に訴えて裁判を起こします。訴訟となります。家裁の判決を受け入れることができたときに離婚は成立します。不服のときは高等裁判所へ上告することができます。日本の裁判制度は三審制ですので、離婚についても裁判になったら最高裁まで争うこともできます。

裁判離婚のメリットは判決として拘束力のある決定になること。デメリットは時間と費用がかかり、その間に人生の多くの時間を費やさなければならないことです。もっとも明確な結論が出る裁判ですが、利用する人が少ないのは時間と費用の問題が大きいでしょう。

和解離婚、認諾離婚は、こうした裁判上のデメリットをやわらげるために平成16年(2004)に誕生した比較的新しい離婚方法です。和解離婚はすでに全体の2%近くにまでなっています。

離婚訴訟となったときは、これまで判決が出るまで離婚できませんでしたが、訴訟となったとでも、訴訟を起こされた側が、起こした側の言い分を認めたときに判決を待つことなく離婚が成立するのが認諾離婚です。このためこの決定は判決と同じものと見なされます。ただし、財産分与、親権問題など離婚にまつわる別の問題がある場合は認諾離婚はできません。純粋に離婚だけを決定する方法です。

和解離婚、認諾離婚は次の項目で触れます。

多くの人が経験している離婚だが数字で見ればわかる厳しい現実

頭に来る、もうガマンできない、という気持ちから「離婚」という言葉が現実的になってきます。でも、感情的に決断するだけでは、幸せな離婚にはなりません。感情のまま突っ走ると、幸せか不幸か、「やってみなくちゃわからない」という状態になります。これでは、あなたはいいとしても、お子さんや周辺の人には不幸しか訪れないかもしれません。

もちろん、まずは自分の人生。それが大事です。そして現実。これは自分だけの力では動かせません。離婚をめぐる現実を知っておくことも大切な知識のひとつです。

平成25年(2013)の人口動態統計によると、離婚件数は23万1000組で前年より4000組減少しています。離婚は昭和39年(1964)以降、増加し続けてきました。昭和から平成に移っての数年は減少傾向になりましたが、その後また増加して、平成14年(2002)に過去最高の28万9836組となったあと、再びやや減少傾向が続いています。

23万組といえば、毎日633組が離婚している計算です。1時間に26組、2分か3分に1組が離婚している計算になります。

全体としては減少傾向ですが、同居期間30年以上の夫婦の離婚だけが前年に比べて増えています。いわゆる「熟年離婚」です。高齢になって子どもが独立したあとの離婚が近年増加しているのです。「これまでは子育てのためにガマンしましたが、もうムリです」という話が増えているとも言えます。

よく言われる数字としては、結婚した4組に1組が離婚していると言われます。その理由のトップは「性格の不一致」です。前年比で増えている熟年離婚ですが、件数としてもっとも多いのは同居期間5年未満。さきほほどの同居30年以上の離婚は1万1311件に対して5年未満は7万4034件です。5年から10年未満は 4万8421件、20年以上は 3万8034件でした。

このため、目立つ離婚の多くは同居年数が10年未満のケースでしょう。だからといって軽い気持ちで離婚しているというわけではないはずです。

世論調査(内閣府)によると、相手に満足できなくなったら離婚すればいいのか、という考え方について、1997年には57%の人が「離婚すればいい」と考えていたのに対して、近年はむしろ46%ぐらいに低下しています。

これは「離婚すればいいと言っても、いろいろな影響を考えると単純には言えない」と思う人が増えてきているのだとも言えます。戦後、アメリカ的な文化がいいものと思ってきた人たちも、このあたりから「そうでもないぞ」と思うようになってきたわけで、これは賢明な反応だとも言えます。

若くして離婚する場合に、シングルマザーとなるケースが増えていますが、2010年の数字て全国に108万人のシングルマザーがいるとされています(総務省)。そのうちの約70%が母子家庭です。約80%が離婚原因でシングルマザーとなりました。そして約86%が働いています。生活のために仕事をしないわけにはいかないのです。

母子家庭の年収はだいたい200万~300万円と言われており、それだけで家族が十分に暮らすには経済的には難しい状況が続いています。社会福祉としての母子家庭への支援も自治体などを通じて行われていますが、教育費などを考えれば生活は楽ではありません。

離婚によって必ず経済的に困窮するわけではありませんが、大変な面も多いことがおわかりになるでしょう。