養育費をとぼける相手にちゃんと約束を守ってもらうあの手この手

離婚のときに慰謝料と養育費をセットで考えている人は多いと思います。貰う側としては、いくら貰っても足りないと思うものですが、当然ながら相手に財産があるならともかく、支払える限界は一般的には低いものです。

相手の生活を破壊させるような慰謝料や養育費の請求は不可能と考えていいでしょう。懲らしめたい気持ちがある人も、やり過ぎると今度は加害者になりかねません。

こうして、協議離婚をする場合でも、調停でも、和解でも、払える範囲の金額で慰謝料や養育費が決まっていくことになります。払えるはずの範囲なのに、それが払われない、といった事態もあり得ます。そうなると、「こっちは妥協した上に、払ってもくれないのはどういうことか」とさらに怒り心頭。殴り込みたくなるかもしれません。

協議離婚のときに、ただお互いに納得して離婚届を出してしまうと、「言った、言わない」という話になりがち。そこで、協議離婚でも、決めたことは書面にして、離婚協議書として残すこと。さらにそれを公正証書にすることをお勧めします。

ここまでしても、払わない場合もあり得ます。そのときに問題になるのは、「払わない」のか、「払えない」のか、です。離婚時にはあったはずの仕事が、その後なくなってしまい、収入そのものが失われたりすれば、支払いが滞ることもあり得ます。

そういう場合に、取りっぱぐれないようにするには、離婚時に一括で払ってもらう方法もあります。これは確実性が高くなります。1人のお子さんについて月額2万から4万円ぐらいの間が多いのではないかと思いますが、3人子どもがいるからといって単純に3倍にはなりません。10万円を超える養育費が得られるケースは少ないでしょう。相手の年収が700万円以上あるなら10万円以上になる可能性はありますが……。

3万円として年額36万円。それが子どもが18歳になるまでで考えるのが一般的です。5歳の子だったら、あと13年。15歳からは教育費が高くなるので養育費も高くなります。5万から6万は欲しいところ。最初10年間は360万円。その後の3年間は216万円。合計576万円。これに慰謝料をプラスして、一括で払ってもらうわけです。

「払ってもらえるか不安だから保証人をつけてほしい」と考える人もいます。たとえば相手の親に連帯保証人になってもらうという方法です。実は、これはあまりうまくいきません。夫婦間の問題ですので、相手の親はなんの義務もなく、どれだけ親が大金持ちだろうと拒絶しても法的には問題がありません。

夫婦で子どもを育てるのが日本のルールです。その夫婦が離婚することによって子どもを育てる費用をお互いに負担し続けることが養育費の意味なので、それを夫婦の親(祖父母)が保証する理屈はまったくないのです。厳しいようですが、一方が養育費を払えない場合でも、どちらかが子どもを育てる義務が親としてはあるので、それを祖父母に負わせる理屈は通らないのです。

一括ではムリな場合、毎月になると思います。離婚協議書を強制執行が可能なようにつくって公正証書にする、調停を受けて離婚するといった方法で、強制執行ができるようになります。ただし、相手が転職した、転居したといった場合には、その先を見つけなければなりません。

このように、あの手この手を考えても、「払えるお金も財産もない」と言われると、強制執行にも限界があることは、あらかじめ理解しておいてください。